御蔵島 野生化ネコ捕獲プロジェクト【Vol.4】
ネコだけじゃくて鳥も救えるんだったら、その方がいい。
〜保護猫カフェ「たまゆら」:今場さんインタビュー〜

御蔵島で捕獲したネコは、島内の施設や島民の自宅で一時飼養された後、「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」がハブとなり、さまざまな譲渡先の協力のもと、家族として迎え入れられます。その中でも、御蔵島のネコを数多く引き受け、譲渡先探しの支援をしている東京・日本橋にある保護猫カフェ「たまゆら」。御蔵島のネコを受け入れることになったきっかけやその想いについて、オーナーの今場さんにお話を聞きました。

保護猫カフェ「たまゆら」オーナー
もともとネコを3匹飼っていて「もっとネコに詳しくなって、いい飼い主になりたい」という想いから保護猫カフェでボランティアを始める。その後、2017年に自らオーナーとして保護猫カフェ「たまゆら」をオープン。
御蔵島のネコは、あまり上を見ないんです(笑)。
御蔵島のネコを受け入れるキッカケは2018年。御蔵島で捕獲活動をしていた草地さんが、ここ「たまゆら」に来られて、御蔵島の話を聞きました。その時に「ネコだけじゃなくて鳥(オオミズナギドリ)も救えるんだったら、その方がいい」と思い「私にできることがあれば」と御蔵島のネコを受け入れることにしました。2019年1月からは、御蔵島のネコのみを受け入れるようになり、これまで約140匹のネコを譲渡してきましたが、そのうち91匹が御蔵島のネコです。
御蔵島のネコは、上を見ないのが特徴です。森の中にいるオオミズナギドリは飛ぶことなく、テクテク歩いているんですね。だから、御蔵島のネコは下(地面)ばっかり見てるんじゃないでしょうか(笑)。でも、ここ「たまゆら」で過ごすことで少しずつその仕草も変わってきます。健康状態が良いのも、御蔵島のネコの特徴ですね。
誰かが疲弊するようでは、サステナブルとは言えない。
代表の長谷川さんを中心とした「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」でワクチンや避妊去勢などの手配をしていただき、その後、私たちのところへ御蔵島のノネコがやってきます。もともと、「たまゆら」がお世話になっている病院の先生から「不妊手術のできない獣医師が経験を積むのに、手術前のネコに協力してもらうことは出来ませんか?」と相談があり、長谷川さんを紹介しました。その後、両者にメリットがあるかたちで話を進めてくれました。
誰かにしわ寄せがきたり、疲弊してしまうようでは、サステナブル(持続可能)な仕組みとは言えません。プロジェクトに関わるすべての人がお互いをリスペクトし、信頼し合える「協力の輪」ができているからこそ、4年間も続けることが出来ているし、成果も出ているのだと思います。



「人に慣れていないネコを、ここに預けてください。」
ここ「たまゆら」には、御蔵島から個性あふれるネコがたくさんやってきます。一匹一匹、本当に性格がちがってかわいいですね。私は、長谷川さんに「人に慣れてないネコをどんどん預けてくださいね」と言っています。かわいくて人なつこいネコは、わりとすぐに飼い主さんが見つかるのですが、「たまゆら」ではそうじゃないネコを積極的に受け入れているんです。実際、ここにいるネコたちは、もともと人に触られるのが苦手な子たちばかり。でも、ここでゆっくりと面倒を見て、いろいろな人と触れ合ううちに人なつこくなっていくんです。その過程を見るのも楽しいですね。
新しい飼い主さんに譲渡する際、一番大切にしているのは、ネコと飼い主さんの相性です。空気感が近いというか、お互いのテンションが似ているというか…なんとなく分かるんですよ(笑)。それでも譲渡する前には、必ず2回以上来店していただくようにしていますし、「トライアル」というかたちで2週間おためしで一緒に暮らしてもらうようにしています。初めて来店して「さあ、この子をどうぞ」といったことはしません。ネコを譲渡することが目的ではなく、人もネコも、みんなが幸せになるように。そのためには、覚悟と相性が大切だと思っています。

ゼロになる日を、見届けたい。
御蔵島のネコを預かるようになった当初、御蔵島の野生化ネコの数は500匹?1000匹?と聞いていました。2018年頃、取り組みが始まった当初は、まだ色々なことが分かっていませんでした。2021年に大学・研究機関も交えたプロジェクトになり、残りの野生化ネコの数がある程度見える化され、あと数年で「野生化ネコゼロ」が実現できそうだと聞きました。そんな報告を聞くと、一緒にプロジェクトに取り組んできて、本当に良かったと思います。御蔵島の野生化ネコがゼロになるまで一緒に活動して、人もネコもみんなが幸せになる日を見届けたいですね。


